性感染症

性感染症とは

性感染症は、性的な行為によって感染する病気の総称です。ここでいう性的行為は、いわゆる物理的な接触を意味しています。すなわち、性交だけでなく、オーラルセックスなどの広い範囲の粘膜接触を含みます。性病の多くは、血液や精液、腟分泌液などの体液によって感染していきます。

以前は性風俗店などにおける不衛生な性行為による感染が多かったため、このような機会を持たない場合には感染リスクが低かったと言われています。しかし、最近は不特定のセックスパートナーとの性交渉や性の多様化などにより、ごく一般に広まっています。

代表的な性感染症は、淋病、クラミジア感染症、梅毒、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、カンジダによる包皮炎、毛ジラミ症、エイズなどです。思い当たる節のある方や、パートナーが性感染症にかかっている方は、早めに専門医による検査、および適切な治療を受けましょう。それが、早期治癒への大切な第一歩です。

性感染症の主な症状

• 性器が腫れている
• 性器がヒリヒリする
• 性器にブツブツが生じた
• 性器から膿のような粘液が出る
• 下着に見慣れない汚れが付着するようになった
• おしっこをする時に痛みや違和感が伴う
• 性器周辺に痒みがある
• おりものの量が増えた
• 性器の痒みがある
• 性器のにおいが気になる
• 外陰部に痛みがある

性感染症の予防について

性感染症の予防にあたっては、コンドームなどを常に正しく使用することが大原則となります。細菌やウイルスなどの付着した粘膜との接触を防ぐので、性感染症のリスクを減らせます。但し、装着方法や装着時期などを誤っているケースも多いので、まずは泌尿器科にて正しいレクチャーを受けるようにして下さい。

また、セックスパートナーを頻繁に変えたり、安全でない状況での性交を避けることも、感染リスクを下げることに繋がります。なお、感染者と性的接触をしていたことが分かった場合、性感染症の兆候が見られた場合は、速やかに泌尿器科を受診することも、感染の拡大を防ぐ意味合いで重要となります。

主な性感染症

淋病

淋菌という病原体が原因となる性感染症です。乾燥や温度変化に弱い細菌なのですが、性行為による粘膜接触で感染し、2～7日の潜伏期間を経て発症します。主な症状としては、尿道からの膿、排尿痛、おりものが見られることもありますが、特に目立った症状がなく、病気に気づかないまま感染が広がることも少なくありません。

診断は性器、尿道からの分泌物や口腔などからの病原体分離培養、あるいは核酸検査で行います。治療に関しては、抗菌薬が基本となりますが、各種の抗菌薬に対して耐性率が高くなっています。放置すると不妊の原因になることがあるほか、感染した母体から出産した新生児が淋菌性結膜炎になることがあります。

クラミジア感染症

病原体はクラミジアトラコマティスであり、性行為における粘膜同士の接触によって感染します。潜伏期間は、1～3週間です。症状としては、男性では排尿時痛や尿道掻痒感が生じますが、女性では症状が軽く、無症状なことも少なくありません。

診断にあたっては、性器や尿道からの分泌物や尿、口腔内からの抗原検出や核酸検査が主に行われます。治療では、マクロライド系やニューキノロン系を中心とした抗菌薬の中から、担当医が判断いたします。クラミジア感染症は、放置すると不妊、流産・死産の原因になることがあります。

梅毒

梅毒トレポネーマによる感染症であり、性行為による皮膚・粘膜病変部との接触を経て発症します。潜伏期間は、約3週間ですが、最初期の段階では目立った徴候が出ずに放置してしまうケースもあります。第１期の主な症状としては、感染部位（性器、口など）に赤色の硬いしこりやただれができ、近くのリンパ節が腫れます。

その後、3～12週間くらいの間に、発熱、全身倦怠感などの全身症状とともに、皮膚に様々なタイプの発疹が現れ（第2期）、さらに10～30年の間に心臓や血管、脳が冒されます（第3、4期）。

診断は、病変部の病原体を確認（顕微鏡観察）するか、または血液による抗体検査で行います。治療にはペニシリン系などの抗菌薬を使います。放置すると第1期から2期、3・4期へと、徐々に進展します。精神異常をきたしたり、死に至ったりすることもあるほか、母体の感染により、出生児が先天梅毒になることがあります。

性器ヘルペス

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが原因となる性感染症です。性行為による皮膚・粘膜病変部との接触によって罹患します。潜伏期間は2～10日です。症状としては、性器の痒み、不快感の後、水泡、びらんが生じます。診断は病変部からのウイルス分離、抗原検出や核酸検査で行います。治療には、抗ヘルペスウイルス薬（アシクロビル、バラシクロビルなど）を使います。

尖圭コンジローマ

病原体はヒトパピローマウイルスであり、性行為による皮膚・粘膜病変部との接触によって感染します。潜伏期間は3週間～8ヶ月と幅があります。症状としては、性器・肛門周囲などに特徴的な鶏冠様腫瘤ができます。

診断は、病変部の形態の観察、病原体の核酸検査で行います。治療は、ベセルナクリームなど塗り薬による治療、液体窒素を用いた凍結療法、電気メスや炭酸ガスレーザーによる切除を行います。当院では、ベセルナクリームのみの対応となります。